CBA FAQの翻訳をするブログ

CBA FAQをひたすら訳します

目次とリンク

元記事:

http://www.cbafaq.com/salarycap.htm

 

1.サラリーキャップとは?何故あるのですか?

2.ソフトキャップとは?ソフトキャップとハードキャップの違いは?NBAはどちらですか?

3.なぜソフトキャップが採用されているのですか?

4.Collective Bargaining Agreement(団体交渉協定)とは?

5.サラリーキャップは昔からあったのですか?

6.CBAの歴史は?

7.2011年の交渉はどうなったのですか?また、2016年に交渉がスムーズに進んだのは何故ですか?

8.2017年のCBAには未解決の問題が残っていますか?

9.現在のCBAはいつ期限切れになりますか?

10.2017年のCBAでどのような変更を加えましたか?

11.Basketball Related Income(BRI)には何が含まれていますか?

12.サラリーキャップは毎年どのように設定されていますか?

13.チームの総サラリーを計算する時には何が含まれますか?キャップルームとは?キャップホールドとは?

14.各チームがサラリーに費やす最低額はありますか?

15.選手は収益の何%を受け取りますか?

16.エスクローシステムはどのように機能しますか?

17.エスクロー口座に十分なお金がない場合はどうなりますか?COVID-19によって2019−20シーズンに何が起こりましたか?その結果、将来のシーズンに向けてどのような変更が加えられましたか?

18.ラグジュアリータックスとは?何故存在するのですか?

19.エスクローとラグジュアリータックスはどこに行きますか?

20.罰金以外にタックスチームに制限はありますか?「エプロン」とは?ハードキャップとは?

21.収益分配はどのように機能しますか?ラグジュアリータックスとどう違うのですか?

22.選手の最低賃金(ミニマムサラリー)はいくらですか?

23.選手の最高賃金はいくらですか?最高賃金に例外はありますか?

24.Designated Player Ruleとは?より高い最大賃金を獲得するためのパフォーマンスの基準は何ですか?

25.サラリーキャップの例外条項とは?

26.例外条項はサラリーキャップに対してどのようにカウントされますか?サラリーキャップを下回っているということはチームがフリーエージェントと契約する余地が必ずあるということですか?チームが例外条項を失うことはありますか?

27.チームが特定の選手と契約するために使用できる例外条項が複数ある場合、どの例外条項を使用する必要があるかというルールはありますか?

28.選手がシーズンの途中に契約する場合、サラリーは日割り計算されますか?「Rest−of−Season」契約とは?

29.チームが選手に支払う金額を少なくして、エンドースメント契約などで関連会社が選手に支払うように手配することはできますか?

30.選手とチームが将来の契約について水面下で合意することはありますか?リーグがそれを知ったらどうなるのですか?それはティンバーウルブズとジョー・スミスに起こったことですか?

31.「平均サラリー」はどのように定義されていますか?

32.ラリーバード例外条項を使用できるようになるまで、選手は1つのチームにどのくらいの期間いる必要がありますか?

33.何故バード権を取得するために3年待つ必要があるのですか?

34.バード権を持っているということは、フリーエージェントと契約してもサラリーキャップにカウントされないということですか?

 

 

25.サラリーキャップの例外条項とは?

NBAのサラリーキャップの基本的なルールは、チームが例外条項を使用しない限り、チームサラリーがサラリーキャップを超えるような選手との契約やトレードを行うことはできないというものです。

ソフトキャップのシステムでは、例外条項は、チームがサラリーキャップを超えても機能するための仕組みです。

例外条項の中には、トレードを行う際にのみ利用できるものもあります。それについては詳しくは質問番号84番で解説しています。

選手との契約に使用することのできる例外条項は以下の通りです*1

 

LARRY BIRD EXCEPTION

LARRY BIRD EXCEPTION -- This exception allows teams to exceed the cap in order to re-sign their own free agents, up to the player's maximum salary. Teams are said to have "Bird rights" to players who qualify. To qualify for this exception a player essentially must play for three seasons without clearing waivers or changing teams as a free agent, however there are nuances to this rule, which are explained in question number 32. This means a player can qualify by playing under three consecutive one-year contracts, a single contract of at least three years, or any equivalent combination. It also means that when a player is traded, his Bird rights are traded with him, and his new team can use the Larry Bird exception to re-sign him. These contracts can be up to five years in length, with raises up to 8% of the salary in the first season of the contract. Players who qualify for this exception are called "Qualifying Veteran Free Agents" in the CBA, and this exception is formally a component of the Veteran Free Agent exception.

The 1983 CBA introduced the modern salary cap, and with it the provision allowing a team to exceed the cap to re-sign its own players. It is commonly believed that this exception acquired its common moniker because Larry Bird was the first such player to be re-signed. However, this is apocryphal, as Bird signed a seven-year contract in 1983 (before this provision took effect), and did not sign another until 1988.

Starting January 10 of each season, this exception begins to reduce in value. See question number 26 for details.

-- この例外は、チームが自分たちのフリーエージェントと再契約するために、選手の最高年俸を上限として、キャップを超えることを認めるものです。各チームは、この例外に該当する選手の「バード権」を持っていると言われています。この例外措置を受けるためには、選手は基本的に3シーズン、ウェイバーを通過せず、フリーエージェントとしてチームを変えずにプレーしなければなりませんが、このルールにはニュアンスの違いがあり、質問番号32で説明しています。つまり、選手は、3つの連続した1年契約、少なくとも3年の単一契約、または同等の組み合わせでプレーすることで資格を得ることができます。また、選手がトレードされた場合、バード権も一緒にトレードされ、新しいチームはラリー・バード例外規定を使って再契約することができるということになります。これらの契約は最長で5年まで可能で、契約の最初のシーズンには給料の8%まで昇給します。この例外に該当する選手は、CBAでは「適格ベテラン・フリーエージェント」と呼ばれ、この例外は正式にはベテラン・フリーエージェント例外の構成要素となっています。

1983年のCBAでは、現在のサラリーキャップが導入され、それに伴い、チームがキャップを超えて自チームの選手と再契約できる規定が導入されました。一般的には、ラリー・バードがこのような選手と初めて再契約したことから、この例外規定が一般的に知られるようになったと考えられています。しかし、これは誤りで、バードはこの規定が施行される前の1983年に7年契約を結び、1988年まで再契約していませんでした。

各シーズンの1月10日から、この例外は価値が下がり始めます。詳細は質問番号26を参照してください。

 

 

*1:トレードプレイヤー例外条項は選手との契約には使用できないため、ここでは記載していない

24.Designated Player ruleとは?より高いマキシマムサラリーを獲得するためのパフォーマンスの基準は何ですか?

特定の選手は、通常受けることができるよりも有利な年数、有利なサラリーでの契約や契約延長を結ぶことができます。

これはルーキースケールの契約を終えた選手(およびNBAキャリア4年目を終えた他の選手)に適用され、サラリーキャップの30%までの初年度のサラリーを受け取ることができます(通常は8〜10年目の選手に適用されます)。

また、ルーキースケールの契約延長を終えた選手(およびNBAキャリア8〜9年目を終えた他の選手)にも適用され、サラリーキャップの35%までの初年度のサラリーを受け取ることができます(通常は11年目以上の選手に適用されます)。

また、ルーキースケールの延長契約を結んだ選手は、所属チームに指定されることにより合計6シーズン(ルーキースケール契約の残っているシーズンを含む)の長期の契約延長を受けることができます。

高いマキシマムサラリーを得るためには、選手は特定のパフォーマンス基準を満たす必要があります*1
以下の項目のうち、少なくとも1つは当てはまっていなければなりません。

 

  • 直近のシーズン、または直近のシーズンの前2シーズンの両方で、オールNBAファースト、セカンド、サードチームのいずれかに選出される
  • 直近のシーズン、または直近のシーズンの前2シーズンの両方で、DPOYに選出される
  • 直近の3シーズンのいずれかで、NBA MVPに選出される

例えば2018年のオフシーズンであれば、選手が以下のいずれかを達成した場合、パフォーマンス基準を満たしたことになります。

  • 2017-18シーズンにオールNBAファースト、セカンド、サードチームのいずれかに選出される
  • 2015-16シーズンと2016-17シーズンの両方でオールNBAファースト、セカンド、サードチームのいずれかに選出される
  • 2017-18シーズンのDPOYに選出される
  • 2015-16シーズン、2016-17シーズンの両方でDPOYに選出される
  • 2015-16、2016-17、2017-18シーズンのいずれかでNBA MVPに選出される

     

     

 

これらのルールや基準のネーミングは、やや一貫性に欠け、混乱を招きます。

Designated Veteranルールは、8年あるいは9年のキャリアの選手との契約や契約延長の際により高いサラリー(上限はサラリーキャップの35%)を提示することができるというものです。

Designated Rookieルールでは、ルーキースケール契約を終えた選手との契約延長をすることができますが、高いマックスサラリー(上限はキャップの30%)の規定はありません。

実際には、Designated Rookieルールの適用を受けるために選手が満たさなければならないパフォーマンスの基準はなく、チームによって指定されるだけで、より長い契約延長を結ぶことができます。

指定された選手は「5th Year, 35% Max Criteria」を達成することで、より高いマキシマムサラリーの資格を得ることができます。


8年または9年のキャリアの選手がより高いマキシマムサラリー(サラリーキャップの35%まで)の資格を得るための基準は5年目のDesignated Playerと同じですが、CBAではこれらの選手のことを「Designated Veteran Player 35% Max Criteria」と定義しています。

高いマックスサラリーの資格があるからといって、必ずしも実際にその金額を受け取るというわけではありません。

すべての契約と同様に、実際のサラリーは選手(あるいは代理人)と所属チームとの交渉次第です。
ただし、Designated Rookieは、最低でもサラリーキャップの25%を受け取る必要があります。

また、5年目のシーズンを迎える選手の場合、サラリーキャップに対する割合は、その選手が5th Year, 35% Max Criteriaをどのように満たすかによって決まります。

例えば、ルーキー契約延長では、オールNBAセカンドチームに選出されて基準を満たした場合は27%、オールNBAファーストチームに選出されて基準を満たした場合は28%、MVPに選出されて基準を満たした場合は30%を受け取るように指定することができます。

1つのチームが一度にロスターに登録できるDesignated Playerの数には制限があります。1チームにつき2人までのDesignated Rookie(より長いルーキースケールの延長を受けた者)と、2人までのDesignated Veteran(30%以上のマキシマムサラリーを得た選手)を所属させることができます*2

ただし、トレードで獲得できるDesignated Rookieは1人だけです。

 

Designated Veteranの契約延長は、ジュライ・モラトリアムの終了後からレギュラーシーズン開始前日までにしかできません。

またDesignated Veteranの契約や契約延長にサインした選手は、サインしてから1年間トレードすることができません。

まとめると、Designated Player ruleと5年目の30%の上限基準を使って契約できる契約や契約延長の種類は以下の通りです。

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※ラッセル・ウェストブルックとジェームズ・ハーデンは、このルールの例外的な適用が認められた。それぞれが2016年に延長契約を結んでいたにもかかわらず、同じチーム(それぞれオクラホマシティとヒューストン)に残り、パフォーマンス基準を満たすことで、2017年にDesignated Veteran ruleに従って新たに契約延長を結ぶことが認められた。

 

契約延長については質問番号58番で解説しています。

 

*1:2017年に限り、4年目のシーズンを終えた選手がサラリーキャップの30%を獲得するために、従来の基準が適用された。1)オールNBAのファースト、セカンド、サードチームに2回以上選出される、2)オールスターゲームでスターターに2回以上選出される、3)NBA MVPに1回以上選出される。

*2:解雇された選手は、元々の契約が残っている期間、Designated Playerの2人の人数制限にカウントされ続ける。ただし、その選手のキャップヒットがストレッチされた場合(質問番号64番参照)、ストレッチされたシーズン中は人数制限にカウントされない。例えば、残っている契約が2020−21シーズンのみのDesignated Veteranが2020年に解雇され、キャップヒットが2021-22シーズンと2022-23シーズンにストレッチされた場合、その選手は2020-21シーズンのみ指定されたベテラン選手2人の人数制限にカウントされる。

23.選手の最高賃金(マキシマムサラリー)はいくらですか?マキシマムサラリーに例外はありますか?

新契約の最初のシーズンにおけるマキシマムサラリーは以下の通りです。

f:id:PelicansChampionship:20210923170140p:plain※レギュラーシーズン中に1日でもチームのアクティブリストまたはインアクティブリストに登録された場合、1年のキャリアとみなされる

 

上記のマキシマムサラリーは一般的なケースのものですが、例外もあります。

1つ目の例外は、複数年契約の場合、契約初年度のサラリーのみが上限の対象となることです。

契約2年目以降の給与は上限を超えることができますが、昇給額には制限があります(質問番号53を参照)。

 

2つ目の例外は、契約初年度のサラリーの上限が、選手の前の契約の最終年のサラリーの105%を下回ることはないということです。

例えば、直近のシーズンの契約が40Mであった8年目のフリーエージェントは、たとえそれがマキシマムサラリーを上回っていたとしても、上限は42Mとなります。

フリーエージェントは、前シーズンのサラリーの105%を受け取るために同じチームと再契約する必要はありませんが、契約したチームは他のフリーエージェントと同様にサラリーキャップの制限を受けます。

 

3つ目の例外は、特定の選手がキャリアの特定の時点で、高い区分のマキシマムサラリーの資格を得ることです(例えば、5年目の選手が、通常は8年目〜10年目の選手のマキシマムサラリーであるサラリーキャップの30%で契約することができます)。これについては質問番号24で説明しています。

 

チームがミニマムチームサラリー(質問番号14参照)に達しなかったために選手に分配する場合、選手はマキシマムサラリーを上回るような分配を受けることはできません。

例えばある選手のサラリーがマキシマムサラリーより0.5M低い場合、分配額は0.5Mに制限されます。

サラリーがマキシマムサラリー以上の選手は、分配金を受け取ることができません。
これによって没収されたお金は、その選手のチームの他の選手に再分配されます。

 

 

 

22.選手の最低賃金(ミニマムサラリー)はいくらですか?

ミニマムサラリー契約の金額は、ミニマムサラリースケールに基づいています。

複数年のミニマムサラリー契約の場合は下の表を斜めに読んでください。

例えば、5年目の選手が3年契約を結んだ場合、契約1年目のサラリーは5年目のベテラン選手の1年目のサラリーとなり、契約2年目のサラリーは6年目の選手の2年目のサラリーとなり、契約3年目の給料は7年目の選手の3年目のサラリーとなります。


2021−22シーズンのミニマムサラリースケール

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※選手は、レギュラーシーズン中に1日以上、チームのアクティブリストまたはインアクティブリストに登録されると、経験年数1年とカウントされます。
これには10日契約やツーウェイ契約を結んでいる選手も含まれます。

 

2017-18シーズンのミニマムサラリースケールは、CBAによって取り決められました。

その後の各シーズンのミニマムサラリーは、サラリーキャップの上昇(下降)率を前シーズンのミニマムサラリーに適用して決定されます。

例えば、2017-18シーズンから2018-19シーズンにかけてサラリーキャップが4%上昇した場合、ミニマムサラリーも2017-18シーズンから2018-19シーズンにかけて4%上昇することになります。

過去のシーズンのミニマムサラリーはこちらをご覧ください。

ミニマム契約を結んでいるプレーヤーは、サラリーの前払いや繰延報酬(115番参照)、トレードボーナス(97番参照)、 Exhibit 10ボーナス(83番参照)などを受け取ることができます。

ローンやその他のタイプのボーナスは受け取ることができません。

2wayプレーヤー(82番参照)は、親チームに帯同している1日ごとに、NBAのルーキーミニマムサラリー(NBAの経験年数は問わない)を受け取ります。

傘下Gリーグチームに所属している場合は、そのシーズンのGリーグスケールサラリーを日割りで受け取ることになります。

ミニマムサラリーは、レギュラーシーズンの初日から日割り計算となります(28番参照)。

現行のCBAより前に結ばれた契約で、適用されるミニマムサラリーを下回るサラリーの場合は、適用されるミニマムサラリーに自動的に修正されます。

NBA4年目以上の選手が、ミニマムサラリーの1年契約、10日間契約、Rest-of-Season契約を結ぶ場合、リーグはその選手のサラリーの一部(3年目の選手のミニマムサラリーを上回る金額)をチームに払い戻すことになっています。

例えば、2017-18シーズンの3年目の選手のミニマムサラリーは1.471382Mなので、11年目の選手のミニマムサラリーが2.238652Mの場合、リーグはチームに0.857270Mを払い戻すことになります。

チームサラリーに含まれるのは3年目のミニマムサラリーのみで、選手のサラリーの満額は含まれません。

この仕組みは、チームが若い選手よりも高いという理由で高齢の選手との契約をためらわないようにするためにあります。


その他、ミニマム契約のリーグの負担について

  • シーズン中に選手が解雇された場合でも、その選手が3年目の選手のミニマムサラリーより多くのサラリーをもらっていれば、チームは払い戻しを受けることができる
  • シーズン途中でトレードされた場合は、それぞれのチームに在籍した日数に応じて日割り計算される
  • Rest-of-Season契約(28番参照)の場合は、払い戻しの基準額(3年目の選手のミニマムサラリー)自体が日割りで計算される
    例えば、2017-18シーズンの3年目の選手のミニマムサラリーは1.471382Mで、177日間のレギュラーシーズンの60日目に11年目の選手とRest-of-Season契約を結んだ場合、リーグは1.471382Mの117/177である0.972608Mを超えて支払われたサラリーをチームに払い戻す
    日割り計算された0.972608Mの金額もチームサラリーに含まれる

 

21.収益分配はどのように機能しますか?ラグジュアリータックスとどう違うのですか?

ビッグマーケットのチームが生み出す高い収入は、BRIを増加させ、サラリーキャップを増加させ、すべてのチーム(低収入のスモールマーケットのチームを含む)が選手のサラリーに費やすことを余儀なくされ、それが持続不可能なシステムにつながっています。

リーグの収益分配プランは、CBA(ラグジュアリータックスを含む)と並行して、フランチャイズの経済格差に対処するためのワンツーパンチとして機能しています。

これは、高収入のチーム(一般的にビッグマーケット)からより低収入のチーム(一般的にスモールマーケット)に資金を再分配し、全30チームの持続可能性と収益性を高めることを目的としています。

NBAでは、2005年のCBA以降、何らかの形で収益分配を実施しています。

2005年のCBAでは、その財源はすべてタックスで賄われ、1シーズンあたり平均40Mが再分配されました。

しかし、多くの場合チームは自分たちがプールに入れたお金を取り戻すだけなので、正味の再分配額は総分配額よりもはるかに少ないものでした。

現在のプランでは、例えば2013-14シーズンには153Mがスモールマーケットのチームに再分配されました。

このプランのコンセプトは、各チームが総収入の同じ割合を共通のプールに拠出し(アリーナ費用などの特定の費用を除く)、そのプールの1/30のシェアに相当する配分を受けるというものです*1

こレにより、収益の少ないスモールマーケットのチームは拠出額が受け取り額を下回ることになり、このプランにおいて利益を得ることとなります。

一方ビッグマーケットのチームは、受け取る金額よりも多くの金額を拠出することになり、このプランにおいては損失が出ることとなります。

本プランのその他の内訳は以下のとおりです。

  • このプランでは、チームはプレーするマーケットの規模(チームが指定した市場のテレビ世帯数に基づいて決定される)に応じて、収入のベンチマークを達成する義務がある
    ベンチマークを下回ったチームは、その差額をプールへの拠出金で補わなければならない
    つまり、チームにはペナルティが課せられる
    収入のベンチマークは、リーグ平均収入の65%(ニューオリンズ)から160%(ニューヨーク、ブルックリン)の範囲

  • 予想収益に満たないチームは、リーグオフィスと協力してビジネスオペレーションの再編成、スタッフの雇用や入れ替え、新しい販売戦略の採用などを含むビジネス改善計画を策定し、実施することが求められる
    このような計画を十分に実行できない場合、チームは収益分配の支払いの一部(最大25%)を失う可能性がある

  • チームが収入のうちプールに拠出する割合は、リーグ全体の収入のうち選手のサラリーが占める割合に基づく
    例えば、選手のサラリーがリーグ全体の収入の50%を占める場合、各チームは収入の50%をプールに拠出することとなる

  • テレビ世帯数が100万未満のマーケットのチームは、収入の15%以上を拠出する必要はない

  • テレビ視聴世帯数が250万以上のマーケットのチームは、レベニューシェアを受け取ることができない
    200万から250万のマーケットのチームは、全額支払いの一定の割合を受け取ることができる(例えば、225万のチームは50%を受け取る)
    200万未満のチームは、全額を受け取ることができる

  • 収益分配なしで利益を上げているチームは、支払い額が少なくなるか、ゼロになる
    収益分配によってチームの利益が10Mを超えるような場合は、分配はなくなる

  • 高収入のチームは、支払わなければならない金額に制限がある
    5Mを超える利益の30%以上を支払うチームはない

  • このプランには、毎年15Mの追加のファンドが含まれている
    チームはこのファンドから支援金を申請することができる

  • 収益分配の計算と支払いは次のシーズンの2月に行われる
    例えば2017-18シーズンの収益分配は、2019年2月に行われた

 

次の表は、収益分配プランの下でチームに何が起こるかを簡略化して示したものです。

チームAは収益の少ないスモールマーケットのチームで、チームBは収益の多いビッグマーケットのチームです。

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つまり、一部のチームが拠出金を制限しているにもかかわらず、常に全額が拠出されています。

不足した場合は、ラグジュアリータックスとリーグの財源で補います。税収の50%がレベニューシェアの財源となり、残りの50%はタックスを払っていないチームに分配されます。

 

 

*1:プール自体は紙上にしか存在しない。150Mをプールに「拠出」し、70Mを「受領」したチームは、実際には差額分の80Mの小切手を送るのみ

20.罰金以外にタックスチームに制限はありますか?「エプロン」とは?ハードキャップとは?

質問番号18に記載されているタックスの金額に加えて、タックスチームには以下のような制限があります。

 

  • タックスチームは、リーグ全体のタックスファンドからの分配を受けられない。
    ただし、エスクローファンド(質問番号19を参照)やレベニューシェアリング(質問番号21を参照)からの分配を受ける資格はある
  • タックスチームは、同時トレードで獲得できるサラリーが小さくなる(質問番号86を参照)


チームサラリーがエプロンと呼ばれるラインを超えると、さらに制限がかかります*1

2017-18シーズンのエプロンは、タックスレベルから6M上にありました。

それ以降のシーズンでは、エプロンはサラリーキャップの上昇率あるいは下降率の1/2ずつ上昇あるいは下降します。

以下は、各シーズンのタックスとエプロンの金額です。

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チームサラリーがエプロンを超えているチームには、上記のタックスチームの制限に加えて以下のような制限があります。

なおチームサラリーがエプロンを超えているかどうかは、取引終了時のチームサラリーで判断します(例えばサイン&トレードの場合、トレード後のチームサラリー)。

  • エプロンを超えているチームは、バイアニュアル例外条項(質問番号25を参照)を使用できない
  • エプロンを超えているチームは、ミッドレベル例外条項(質問番号25を参照)の枠が小さくなる。具体的には、エプロン未満のチームが4年契約を提示できるのに対し、エプロンを超えているチームは3年契約以下となり、初年度のサラリーも低くなる

  • エプロンを超えているチームは、サイン&トレード取引で選手を受け取ることができない(質問番号92を参照)。なお、チームがエプロンを超えているか超えていないかは、サインだけではなく、サイン&トレード完了後に計算される

  • エプロンを超えているチームは、ギルバート・アリーナス条項(質問番号43を参照)において、エプロンを超えていないチームと同じ保護を受けることはできない。
    アリーナス条項では、他のチームは制限付きフリーエージェントに対して、ノンタクスペイヤーミッドレベル例外条項までのサラリーを提示することができる。
    拒否権を持っているチームが、その選手のアーリーバード権を持っておらずエプロンを超えている場合、使えるのはより小さいタックスペイヤーミッドレベル例外条項だけであり、満額のノンタックスペイヤーミッドレベル例外条項のオファーにはマッチできない

 

 

上記の例外条項などはエプロンを下回っているチームのためのもので、エプロンはこれらの例外条項を使用したシーズン全体に適用されます。

例えば、チームサラリーがエプロン未満のチームがバイアニュアル例外条項を使用した場合、そのシーズンの残り期間(翌年の6月30日まで)、エプロンを下回っていなければなりません。

 

言い換えれば、チームサラリーがエプロン未満のチームが、バイアニュアル例外条項を使用したり、サイン&トレードで選手を獲得したり、ノンタックスペイヤーミッドレベル例外条項を使用してタックスペイヤーミッドレベル例外条項で認められているよりも大きな契約を選手と結んだりすると、そのシーズンの残りの期間、エプロンによってハードキャップになるということです。

これにより、チームが先にこれらの例外条項を使用し、その後契約によってサラリーを追加してエプロンを超えるという抜け道はなくなります。

チームがハードキャップとなっている場合、どのような状況であってもエプロンを超えることはできません。

もしチームがその後選手と契約する必要がある場合(例えば、負傷した選手の代わりに)、まずエプロンとの間にスペースを作らなければなりません。

そのためには、サラリーが保証されていない選手を解雇する、サラリーが保証されている選手を解雇してストレッチ条項を利用する、トレードをしてサラリーを下げる、などの方法があります*2

ハードキャップの対象となるチームは、サマー契約(質問番号70を参照)を利用してトレーニングキャンプに参加する選手と契約することができますが、ハードキャップを下回るために必要であれば、レギュラーシーズン開始前にウェイバーをクリアしなければなりません。

ハードキャップの対象となるチームは、サラリーの日割りによってエプロン以下に抑えることができるのであれば、シーズン中にRest-of-Season契約で選手と契約することもできます。

チームサラリーの計算は、質問番号13の内容によって調整されます。

 

 

*1:厳密には、CBAはタックス・エプロン・アマウントをタックスラインの上のマージン(例:6M)と定義しており、タックスラインを含む全額(例:125.266M)ではありませんが、一般的には後者で通っている

*2:ボーナスはシーズン中に再評価されないので(選手がトレードされない限り)、ボーナスを獲得する基準を満たしていない選手はチームサラリーに影響を与えず、ハードキャップにも影響を与えない

19.エスクローとラグジュアリータックスはどこに行きますか?

エスクロー(質問番号16を参照)やラグジュアリータックス(質問番号18を参照)の制度で徴収したお金は、一定のルールのもとチームに分配したり、”リーグの目的”に使用したりすることができます。

エスクローマネー

  • エスクローマネーの一部または全部をチームに分配することができるが、全チームに均等に分配される場合に限る
  • チームに分配されなかったエスクローマネーは、”リーグの目的”に使用される

タックスマネー

  • タックスの50%までは、タックスを払っていないチームに分配することができる。ただし、チームに分配することは義務付けられていない
  • チームに分配されないタックスは、”リーグの目的”に使用される。言い換えれば毎シーズン、税収の少なくとも50%が”リーグの目的”に使用される


"リーグの目的”とは、基本的にリーグが定めたあらゆる目的を意味し、その中にはチームへの分配も含まれています。

現在、税収の50%は収益シェアプログラムの財源として使われ、残りの50%はタックスを払っていないチームに均等に分配されています。

タックスラインを超えた場合の影響のわかりやすい例として、チームサラリーがタックスラインのわずかに下にあるチームの選手が負傷し、代わりの選手と契約する必要がある場合どうなるかを考えてみましょう。

このチームは、選手のサラリーを支払い、タックスラインを超えた分のタックスを支払い、本来受け取れるはずだったタックスの分配を没収されてしまいます。


以下は、各シーズンのエスクローとタックス関連の実際の数字です。

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※1  サラリーとベネフィットの合計が指定されたシェアを超過した分

※2  ”選手の予備ベネフィットプール”と追加のエスクロー源泉徴収